狙われし王女と秘密の騎士


堪らず俯くと、カイルは「さっき陛下にお会いした時に聞いたんだ」と教えてれた。
心の中で父王に舌打ちする。
一番知られたくなかった人だったのに。


「縁談、受けないのか?」


カイルの静かな声に胸がギュッとする。


「……受けない」
「今回のも?」
「うん」

私の返事にカイルは黙って目を逸らす。


「へぇ……」


カイルの声が低くなる。
沈黙が下り、なんとも気まずい空気が流れる。
しかし、カイルの用とはなんだろう。
復興支援の援助についてなのか。
それともサルエル国の新国王への条約や物資についてなのか。
話をそらすためにも、訪問の理由を聞こうとした。
すると、カイルは横を向いたまま、私が口を開く前に意外なことを口にした。


「……実は俺にも、縁談の話があるんだ」
「えっ!?」
「受けることになるかもしれない」


その言葉に驚愕する。
カイルにも縁談!?
ということは、カイルは結婚するというのか。 
サッと血の気が引く感じがした。
胸の辺りが急に冷たく感じて、そっと手で押さえる。
小刻みに自分の手が震えていた。


「あ、相手は?」
「……ん~……」


カイルは答えない。
私には言いたくないのだろうか?
まさか結婚するから、わざわざその報告に来たと言うのだろうか。
結婚式に出席して欲しいとか。

カイルの訪問の理由がわかった。



< 189 / 201 >

この作品をシェア

pagetop