天翔る奇跡たち
 

 少年は右足の腿から思い切り金のリングを引きちぎった。

「あなたも二度とこのような場所へ踏み入らぬことですね。あなたは一族の長となる身、どこで命を狙われるかわかりませんよ」

「気に食わぬ……気に食わぬ。そこまでの力を持ちながら、許せん!」

 少年は二度と振り返ろうとはしなかった。

「純金だと思う人ー」

 あたしは思いっきりしゃがみ込んで言った。指先でつついて、ちょっと持ち上げてみようとする。うん? 気のせいかな? ずいぶん見かけを裏切ってる。なんだか重い感じ?

 少ししてグリフが言った。

「たぶん、特別な金属でできてるんだと思うよ」

「貴金属屋に売れるかなっと」

 ガナッシュがむんずとリングをつかむ。

「げ」といきなりその表情が凍り付いた。

「ガナッシュ、チョーカーには太すぎるよー」

 あたしはけらけらと声を立てて笑った。だって、ガナッシュったら頭からかぶろうとするんだもん、ドラゴノーツの印。

「るせっ、なんだ、この」

 ん? ガナッシュの腕が震えてる。どうしたんだろ?

 傍らでディノーディアさんが嘆息した。

「情けない……」




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