天翔る奇跡たち


「なんだとっ」

 なぜか自分のことだと思ったガナッシュがわめく。

「わぬしの事ではない。もう、あやつは名を捨てたのだ。姉御との絆を……引きちぎるとはよくも……」

 ディノーディアさんは自分で言っていた通り、悔しそうに、のどの奥を震わせていた。

なんだろ? こういうところは人間そっくりなんだけどなあ。ワケがわからない……。

「あそこまでかたくなに自分の出自を否定するとは。ドラゴンの絆は永遠なのだぞ。それを、易々とリングごと捨て去ってしまうとは」

「そんなこと無いと思うな」

 とグリフ。

「なんで引きちぎる必要性があったのだと思う? 憶測だけど、すんなり渡すほど簡単ってわけじゃあなかったんだと思う」

 優しく、落ち着いた声で噛んで含めて諭す。あたしはなんだか頷かされてしまう。

 だけど次の瞬間、ぎょっとした。



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