幕末異聞
「お…んな……?」
「そうや。こんな風体してるうちも悪いんやけどな、うちは正真正銘、女や」
「そ、そうだったんですか…」
ようやく自分が勘違いをしていたことの気づいたお絹はまた顔を真っ赤にしてよろめいた。
「だ、大丈夫か?!」
咄嗟に楓がお絹の体を引き寄せる。
「本当に…女の子だ」
最初に会った時も落ち着いて見ればすぐに女だと解ったはずだ。間近で見た楓の体や手は、間違いなく女性だった。
「ごめん…」
「あ、謝んないでくださいッ!!勝手に勘違いしたのは私です。本当に、ごめんなさい!!」
お絹は楓に向けて深々と頭を下げた。
「お絹…」
「あの!!」
下げた頭を思いっきり上げ、お絹は楓に向き直る。
「お…お友達になっていただけませんか?!!」
「…と、友…達……?」
楓はお絹の申し出に全身の力が抜けてしまった。
「女の…赤城楓と?」
自分の性別をを強調して再度確認する。
「女の貴女だからです!」
花が咲いたようなお絹の笑顔に楓は不覚にも顔を桃色に染める。
「あんた…ええんか?」
「女にも二言はありません!!」
お絹は右手を自分の前に伸ばし、楓の手を迎える体勢をとった。
「そうか…そうやな。
ほな、今日からよろしくな」
「こちらこそよろしく!楓!!」
楓はゆっくりお絹に手を差し出し、硬い握手をした。