幕末異聞―弐―


「歳、本当にすまない」


「…やめてくれ。局長が部下に頭下げるなんてしちゃいけねーよ」

「いや、しかし…」


「近藤さん。今更だろ?」

「うぬ…」


屯所で最奥の部屋、副長室でもすっきりと晴れない空気が漂っていた。
罪悪感に苛まれる近藤と、その近藤に対しての苛立ちを隠しきれない土方だった。

「いや、どうもあの子の反応が気になって…。何故反論も抵抗もしなかったのかと」

「いいじゃねーか。あんたが望んだか理想の形で除隊させられたんだからよ」

「それは…そうなんだが…」


うーんと顎に手を当てて唸る近藤に痺れを切らした土方は、引き出しに入れていた煙管を取り出した。


「近藤さん、俺はこれから急ぎの書状を書かなきゃいけねーんだ。悪いが、自分の部屋で悩んでもらっていいか?」

そんなのは真っ赤な嘘だ。
しかし、今の土方はどうしても一人になりたい気分なのだ。ちらっと厳つい顔に似合わない上目遣いをして、助けを求める近藤に気づかないふりを決め込む土方。
結局、近藤は渋々と猫背で部屋から出て行った。



「何で反論しないかって?少し考えればわかるようなもんだがな…」


土方は煙管をに葉を詰め、カチカチと火打石を打ち合わせる。


――昨日の総司との一戦だ。


土方には確信があった。楓が無残な敗戦を記し、相手は沖田と聞いた時、そして除隊の命を下された今日の楓の態度。土方の中で全てが繋がった。


「総司の野郎、知ってやがったのか」

ちっと大きく舌打ちをし、煙の出始めた煙管を咥える土方。


それを知ったところで今更何がどうなるわけでもない。煙管から出た煙は、さほど広くない部屋の天井から白く霞ませて行く。
まるで自分の心を見ているようだと、こんな時でも俳句を読む者としての心を忘れない自分を笑う土方であった。




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