幕末異聞―弐―
「「…」」
二人の間に長く沈黙が続く。それに合わせるように、広間にいた隊士も黙々と食事を進める。
「…なんか話してくれんか?食いづらい」
いつもは沖田や藤堂、原田と食事の時間が被る事が多く、無音の中で食べるというのに慣れていない楓は堪らず自ら口を開いた。
「では、話そう。君の好きなようにすればいい」
「…は?」
質問を振るでもなく、いきなり結論まで話を進めてしまった斎藤に、楓とそこにいた隊士は混乱する。
「俺の予想では、今回は明らかに沖田君が悪い。一発殴って端正な顔立ちを歪めるくらいは許されるんじゃないか?」
あまりにも真剣な顔で物騒な発言をする斎藤に、黙っていた隊士たちは思わず持っていた箸を落としそうになる。
「く…くくくっ!なっははははは!!!」
突然部屋の空気を激しく揺らす笑い声。足をバタつかせ、子供のように爆笑しているのは楓であった。
「ま…まさかあんたからそんな助言もらえると思わんかったわ!」
「そうか?」
咳き込むほど笑う楓を見て、斎藤は無表情をほんの僅か穏やかなものに変えた。
「それともう一つ」
「?」
「あまりよくない事実だが、君の考えはそう間違ったものではない。しかし、自然の理をそのまま適用しただけではうまくいかないのが人の世の理のおもしろい所なのだ」
「?!」
子をあやすように優しく細めた目で楓と向きあった斎藤は、膳に揃えた箸を置いた。
「では、失礼する」
膳に向けて一例し、美しい所作で席を立つ斎藤。