幕末異聞―弐―
七月もいよいよ終わるというのにどこか寂しげで肌寒い夜だった。
明日の空模様を伝える分厚い雲が満月の半分を隠していた。
こんな日は柄にもなく不安に駆られることもある。
いや、今日は不安というより苦しい。
明日あの人がいなくなるからかもしれない。
「これで…よかったんだ」
庭の青々と茂る植物たちはそうだとでもいうように、風を受けて葉を上下に揺らした。都合のいい話だろうけど自分にはそう見えた。
「ふふ。きっと恨んでるだろうな」
「ああ。殺してやりたいくらい恨んでる」
「!!!?」
何の音もしなかった。人の気配など微塵も感じなかった。
でも今、背後には確かに人がいる。
「おい。刀持って来い」
赤城楓がいる。