二 億 円
「や、やめてっ!やめて来ないで…!!」
怖いコワい恐い!!!
彌生のことが、怖い。
殺されてしまうんじゃないか、と頭によぎってしまうほど。
「…こんな思い、したくない。とお思いですか?
ならば二度と聞かぬことですね。
あまり私を怒らせないで下さい。
私、こうみえて意外に短気なんです。」
ニコリ、と笑いかけてくれる彌生だが、正直それどころではなかった。
「…ひなた?どうしましたか?」
やだ、恐い。
「 ひ な た ?」
ヤダヤダヤダヤダ!!!!!
握られていた手首が痛む。
さっきの彌生の冷たい瞳、獣のような瞳が思い出される。
「さ、触らないで!」
パシッ
「ひなた…」
思い切り、彌生の手を払いどけてしまった。
「あっ…ごめんなさ…」
「…。」
嫌な沈黙。気まずい雰囲気。
彌生との間に生まれる溝。
「…許しません。
許しませんよ、ひなた。
私を拒絶?否定?
そんなこと、許しません。」
無理矢理引き寄せ、強く抱き締める。
体が軋むかのように、強く、荒く、抱き締められた。
そして首もとで感じる冷たい感触。
ガチャ
「一生、私から、屋敷から、逃げられないようにしておかなくては、ね。」