( 新撰組 * 恋情録 )

 あたしが本当に落ち着くまで、
 土方歳三は不器用な手つきで
 頭を撫でてくれていた。そして―‥

 「 ‥仕方ねぇから、お前のことは
       暫く此処に置いてやる。 」

 間者の疑いが晴れても、
 未来人だってことが受け入れられても
 結局はこの時代で生きていく
 宛なんてないあたしを
 土方歳三は―‥新撰組は
 女中として引き入れてくれると言う。

 「 あの、ありが―‥『 無論、みっちり
  働かないなら 即刻出て行ってもらう
      から、覚悟しておけよ。 』

 ‥そういう所は、
 やっぱり鬼の副長だけど。

 「 後、生憎屯所は手狭でな。
  お前にくれてやる部屋はねぇ。
  誰かと相部屋をしてもらう事になる。
  俺か総司か斎藤か‥別に他の隊士
  でも構わねぇが、まだ紹介が
  済んでねぇだろ?‥ほら、誰と
     相部屋するか さっさと選べ。 」

 「 土方さんの部屋は辞めといた方が
    良いですよ、襲われますから。 」

 「 襲‥っ?! 」

 「 てめぇ、総司! 誰が襲うか!
    人を変態扱いすんのも
          大概にしやがれ! 」

 「 変態扱いじゃなくて、
         本当に変態なんです 」

 「 ふざけんな! 」

 あわや刀まで持ち出しそうな
 土方歳三を 斎藤一が諌める。

 「 副長、落ち着いて下さい。
        ‥彼女が驚いています 」

 「 あ、いやあたしは別に‥(笑) 」

 ( そうだ、部屋を決めなきゃ! )

 今目の前で繰り広げられているような
 面白い光景が、一番近くで
 見られそうなのは―‥

 「 ‥あたし、土方歳三と相部屋します! 」
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