ご主人様はお医者様
この言葉は、決定的な別れの言葉――そのつもりだった。
これで、本当にさようならだよ。
こうして身を引くことが、先生の為に一番言い方法なんだって思ったから。
でも――――…。
「違う!!
誰が自分にふさわしいか、俺自身がよくわかっている……それは君だよ、ハル」
先生は、もう一度私に手を差し出した。
「婚約の話は始めから断るつもりだったんだ。
小春、愛している――だから……」
私は何も言えずにクビを横に振る。
でも、先生はいきなり私を抱きかかえる。
そのままフワリと持ち上げられて、タクシーから降ろされてしまった。
「運転手さん、行って下さい」
先生の言葉と同時にドアがバタンと閉まり、タクシーは静かに走り出す。
「イヤッ…先生、降ろしてくださいっ!」
「ダメ…、もう逃がさないって言ったろ?」
そう言いいながら先生は、私をみつめて優しく笑った。