月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「入道崎、夕陽見られるかな」

「どうだろ。時間があるなら見たいよな」

 小声でそう話していると「お兄ちゃん達」とおばちゃんが言った。受話器を押さえている。

「男鹿駅と入道崎往復コース、特別やってくれるって。観光タクシーあるけど、どうします?」

 往復してくれるの? タクシーで? 嬉しいけど、あたし達はお金のことが気になった。タクシーで入道崎っていったいどれくらいかかるんだろうか。

「あの、料金、どれくらいですか?」

「案内料込みで1,000円ずつでいいって」

 え、そんな金額でいいの?

「じゃあ……お願いしようか」

 冬海はあたしの方を伺う。こんな低料金で往復してくれるなんて、思ってもみなかった。

「お願いします」

 おばさんは「はいお願いします~1台駅前で~」と訛って言って、電話を切った。


「学生証とかある? 生徒手帳とか。一応学校名とか住所、控えさせてください。特別コースだけど、未成年だからさ」

 あたしはバッグから生徒手帳を取り出そうとした。その時に、冬海はそういった類のものを持っていないことに気付く。

「彼、生徒手帳再発行の申請中なんです。紛失しちゃって。あたしのだけでいいですか? 同じ学校です」

 嘘も方便。学校に特別連絡行くことも無いだろうし。強行突破だ。ダメだって言われればそれまで。諦めよう。

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