月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「逆方向だね……気を付け」

「センパイ、泣いてんの?」

「……」

「俺、目ぇ良いんだ」


 頬を温かい水滴が伝っていた。



 周りに気付かれまいと、下を向いて水滴を拭く。

 なんで、どうしたあたし。


「どうしたの? なんかあったの?」

 優しい声音で聞いてくる冬海。

「なんでもない、なんでも。ちょっとコンタクトが」

「……そっか」


 少し強い風が吹く。

 ホームを吹き抜けていった。電話口に雑音を残して。


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