月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「この間……」あたしは口を開く。涙なんか、なんでもないの。

「夜、電話くれたでしょ? 出なくてごめんね」

「あー……うん。いいよ、なんでもないんだ」

「そう」

 また、冬海のふふっと笑う声。

「二人で、なんでもないんだね」

 涙もなんでもない、電話もなんでもない。二人で同じような事を言い合う。

「そうだね、へんなのー」

「笑ってるし」

「へへ」

 鼻水をすすってあたしは笑った。

 その時、電車が入ってくる音が聞こえてくる。

 冬海が居るホーム、あたしが居るホームに同時に。

 あたしは、電話を切るタイミングを失って、どうすればいいのか分からなくなった。


「電車が……」

「センパイ」

「え?」

 ギギィーッとブレーキの音に、冬海の声が掻き消される。

「なに?」

 ちょっと大きな声で聞いたけど、もう冬海が何を言ってるのか分からなかった。


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