ダブルベッド

 充はムキになって、桃香の手を握った。

 昨日とは違って、温かかった。

「嫌いになんかならないさ」

「嘘よ。木下くんは、まだ何もわかってない」

「わかってないって何だよ」

「あたしのこと」

 ついつい口調が強くなってしまうが、桃香は怯むことなく言い返してくる。

 昨日だってそうだった。

 充はしおらしい女だと思っていたが、予想以上に強さを持ち合わせているらしい。

「これから知っていけばいいんじゃないの?」

「だから、それじゃあどんどんあたしを嫌いになる」

「ならねーよ」

「なる、絶対。だって」

「だって、何だよ」

「あたし、人を殺してるのよ?」

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