ダブルベッド

 再び出た、殺すという言葉。

 満は再びドキッとしてしまった。

「それは、事故なんだろ?」

「そうよ、事故。だけど、あたしは確かに人を殺したの」

「わざとじゃない」

「わざとじゃないからって、のうのうと生きていけるわけじゃない」

「のうのうって……」

「木下くん、わかってない。あたしには、人を殺した過去があるの。もちろん殺すつもりなんてなかった。でも、殺してしまったの。それがどれほど辛いものか、絶対わかってない!」

 声を詰まらせながら目に涙を溜め、しかししっかり充を睨む。

 絶対……。

 桃香はそう言ったが、確かに充には、その辛さは想像できなかった。

< 112 / 345 >

この作品をシェア

pagetop