ダブルベッド

 黙ってしまった充に、「ほら見なさい」といった顔をする桃香。

 充は悔しい気持ちを押し殺し、桃香の手を放した。

「あたしはね、もう幸せになんかなれないの」

 事故で人を殺してしまったから、自分には幸せになる権利はない、と言いたいのだろうか。

「そんなことない。池田さんだって、何ていうか、反省してるわけだし」

 下手な言い方だが、そうとしか言えなかった。

「反省? あたし、反省なんてしてない」

「え?」

「してるのは、後悔だけよ」

 後悔。

 それは一体どんな事故だったのだろうか。

 気になるが、聞くことは思い出させることになる。

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