ダブルベッド
草食系男子、侮れない。
充は手にギュッと力を込めた。
桃香が会社にやってきた時だって、興味がなさそうにしていたのに。
色気のない沢田は、ライバルとしては完全にノーマークだった。
「いるような、いないような」
二人の答えがシンクロする。
自分が一番近い存在だと思っていたのに、自惚れだった……と、充は落胆した。
しかしながら確実に芽生えてしまった恋心。
一歩出遅れてしまった悔しさが頭にずんとのしかかる。
桃香がやって来たあの日、充は胸のポケットに辞表を忍ばせていた。
何となく入社したこの株式会社SK企画。
仕事はキツイし、うだつも上がらないし、美人は退社してしまうし。
やる気がないならいっそ辞めようと思っていた。
それを思い留まらせたのは、桃香のあの一言だった。