駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「…まあ、まあまあまあ!?」
――――バッ!!
真剣な会話をしている最中、突然背後から間の抜けた声に、二人は焦り気味に振り返る。
山崎は注意深く気配を探っていたはずなのに、声がするまで気付かなかったことに驚きだ。
「誰や…って、沖田さん…」
「どうも。お邪魔しちゃいましたかね?」
振り返ると其所にいたのは、口元を隠し笑っていることを隠しているつもりが、全く隠せていない沖田であった。
春色の着流しに赤い羽織を肩から軽くかけた軽装姿の沖田に、矢央は小首を傾げる。
「…邪魔って何がですか?」
「え? いやだって、ほらそれ」
野暮なことを言わせるな、とおばさんのように掌を上下に動かした後、矢央の肩に回された山崎の腕を座した。
すると、二人一斉にそこに目をやり数秒固まったかと思えば、
「沖田さん、あなたは誤解しとります!」
「そ、そうですよ! 別に変なことしてたわけじゃっない!」
沖田のニヤケ顔に、全否定をしてみせる。
「だいたい山崎さんって若く見えますけど、実はおっさんだって隠してたし…」
「隠しとらんわ」
「好い人ぶって、本性は性悪小姑みたいだった…」
「それは、お前が仕事できんすぎるからやろ」
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