駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「誰に何を言われたんですか?」
「……え?」
太陽の日を浴びている沖田を眩しそうに見上げる矢央は、見る見るうちに頬を赤く染めていった。
その顔は女性が恥じらう時に見せる表情だと察し、矢央に悟られないように息を吐く。
「遠慮せず話してください」
*
時は少し遡り、矢央が永倉の部屋を訪れていた時のこと。
「…矢央…」
真剣な表情で真っ直ぐ見つめてくる永倉に、いつになく緊張して固まってしまう。
緊張に耐えかね視線を俯かせた矢央の頬を熱い掌が撫でると、ビクッと細い肩を揺らし、また視線を上げた。
「平助と約束したってわけじゃねえ…」
永倉は自分に言うように呟いた。
不安に揺れる瞳を見つめる双眸は、ほんの少しだが躊躇っているように揺れた。
「俺はお前を…矢央を守っていきてぇと思ってる」
「…永倉、さん?」
頬を撫でられくすぐったさに身をよじれば、頭上からフッと鼻で笑われたが、からかっているのではないと分かっているので相変わらず緊張は解けないままだ。
いつもだったら、こんな真剣なムードはどちらかともなく崩して二人で笑い合うはずなのに…。
永倉は至って真剣で、だったら自分が崩そうかと思うが、どうもそうしてはいけないような気がする。