駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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青かった空が、もうすぐ赤くなろうとした頃、慌ただしい声と共に島田に担がれるようにして帰ってきた近藤を見て矢央の顔は青く染まっていった。
十二月十八日。この日近藤は二条城で行われる軍議に出席するべく朝餉のあと島田を含め護衛のために隊士三名を連れて屯所を出た。
気をつけて行ってきてください、と土方と共に見送りする矢央の頭をガシガシと撫で笑顔で出で行った近藤が、まさか血塗れになって帰って来るなんて誰が想像できたろうか。
「近藤さんっ、えっ?どうしてっ?」
右肩から大量の出血。
伏見奉行所に帰って来るまでは何とか馬に乗っていたが、辿り着いた途端意識を失い落馬した近藤を島田が担いできたのである。
「とりあえず医者だ!島田君、近藤さんを部屋へ!」
意識のない近藤を見てガタガタと震える矢央を退かし、土方はそれぞれに指示を出していた。
「矢央ボサッとしてねぇで、ありったけの手拭いと水を用意してこいっ!」
「……」
「矢央!!」
「っ!は、はいっ!」
土方の鋭い怒声に身を震わせながらも、言われた通り行動しようと走った。
どうして近藤が?
今朝は笑顔で出で行ったのに。
先程の近藤を思だしては涙が溢れた。
「いっ急がなきゃっ!!泣いてる場合…じゃないっ!!」