駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
矢央が土方の指示通りありったけの手拭いを腕に抱え部屋に訪れると、既に医者がいて近藤の治療中だった。
水は山崎が持ってきてくれたらしく、医療に携わっていた山崎は医者の助手をかって出たらしく、矢央も何か手伝えないかと聞いたが部屋の外に追い出されてしまう。
そこに土方がやってきて、不安に唇を噛む矢央の頭を撫でた。
「軽い手当てしかできないお前じゃいても辛いだけだ。大丈夫、あの人は簡単にくたばらねえ」
そう言う土方こそ眉間の皺を寄せ、じっと閉じられた障子を心配そうに見ている。
大将がやられて平気でいられるはずがない。
「矢央、総司の傍についててやってくれ」
近藤のことを聞いた沖田は取り乱し、すぐさま寝床を飛び出そうとした。
「…土方さん、近藤さんが起きたら会いにきてもいいですよね?」
近藤さんと叫びながら青白い顔を更に青くさせる沖田を止められないと判断した隊士が土方に頼み、何とか宥めてきて今に至る。
「ああ。お前の阿呆面見たら近藤さんも笑い転げるだろ…って、それじゃあ駄目じゃねえか!とりあえず、お前は総司を頼む」
自分でボケて突っ込む器用さを見せる土方に、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻し弱々しく笑いながら「はい」と返事し、沖田の部屋に向かった。