駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
あたたかい。
胸に耳を押し当てると、トクントクンとほんの少し早い心臓の音が聞こえる。
永倉がしているように、矢央も恐る恐る永倉の広い背に腕を回してみた。
ーーすごく安心する。
「矢央、お前のことは必ず守るからいつも笑ってろ」
え、と思い顔を上げる。
すると永倉は矢央の顎を指で支えくいっと持ち上げた。
視線と視線が絡み合い、お互いに目を反らそうとしない。
「……お前の笑ってる顔が好きなんだよ。誰のためにでもいいから笑っていてくれ。そうすれば、俺はその笑顔を見るために必ず生きて帰ってくる」
「…っ…」
見る見るうちに赤く染まっていく顔。
恥ずかしくて反らしたいのに、永倉は許してくれない。
「…永倉さ、ん…私、私は…」
「ゴホッ!ゴホッ!」
「…ッッ!!」
いきなり咳をした沖田に驚き二人の距離が開いた。
永倉は咳き込む沖田を気にして横向に寝返りをうった沖田の背中を撫でてると辛そうに眉を寄せた。
そしてドキドキと鳴り止まない心臓部分を押さえ、永倉の背中を見詰めていた矢央は更に頬を染めていた。
…今、私………。
秘めていた想いを打ち明けかけた。
言いたい。伝えたい。届いてほしい。
恋をしている状況ではないのに、それでも伝えたいと想いは募っていった。