執事と共に聖夜を。
「嘘、でしょ……」


その金属片は、知恵の輪になっていた。


3つの金属が絡み合い、力任せでは絶対に外せないようにできていた。

これはもう、推理力とかは関係ない。

何度か、かちゃかちゃと音を立てるが全く歯が立ちそうになかった。


「ここまで来たのに……」


恵理夜は、あきらめてもう一度書棚を見上げる為に起き上がった。



――が、急に世界が傾く。



頭の芯が後ろに引っ張られる。

抗えない感覚に、身体の芯が凍りつくような恐怖が襲う。

けれど、その恐怖ですら恵理夜にとって身近なものだった。

一度捕らえられたら逃れることの出来ない恐怖に、恵理夜は諦めて屈しようとした。



――その時、


「恵理夜様っ」


春樹の声が、聞こえた気がした。
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