執事と共に聖夜を。
「で、どうしてここに来たのよ」

「薬の、飲み忘れを見つけましたので」

「あら、確かに飲んでから出たわよ」

「はい、一つは。ですが、朝の薬は2袋あるんですよ」


恵理夜はしまった、と額を抑えた。

いつも、春樹に頼っていたせいで忘れていたのだ。


「おまけに、こんなに冷え切った部屋で長時間動き続ければ、倒れもしますね。昨日学習したと思ったのですが」


春樹は、心底呆れ切った、という表情だった。


「厭味を言いに来ただけなの」

「まさか。お薬を渡しに来たんですよ」


そう言って春樹は恵理夜の腕を取った。

注射痕だらけの痛々しい腕だ。


「新しく処方されたものです。失礼しますよ」


消毒も荒々しく、何のためらいもなく注射薬を打ち込んだ。


「痛いわよっ」

「失礼致しました。こうでもしないとまた、薬を忘れると思ったので」


春樹は、目線を合わせないまま言い放った。
< 31 / 93 >

この作品をシェア

pagetop