執事と共に聖夜を。
「……怒ってる?」

「……そうですね」


春樹は、薬の投与を終えた針をそっと抜いた。


「……私を呼ぶように、言いましたよね」

「それはそうだけど、」

「今もそうです。ご自分でわかっていたでしょう。体温調節が上手くいかないと」

「そうだけど、日が出てるからまだ暖かいかと思って……」

「倒れて、そのまま誰にも見つけてもらえなかったらどうするおつもりだったのですか」

「でも……」

「でも、なんです?」


言葉の先を続けられない恵理夜は、唇を噛みしめ、言った。


「ごめんなさい」


その言葉で、ようやく春樹は、恵理夜と目線を合わせた。
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