新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
俺は汗だくになりながら湿地をかき分け、歩き回り、やっと彼女を見付けることが出来た。
「リュウさぁん! あのね、聞いて? 見てみて、これ!」
こんなに心配をさせておいて、彼女はそのことに触れようともしない。俺はその能天気な態度に閉口して、そっぽを向いていた。
「こんな右も左も解らない世界で、よくそんな呑気にしていられるな」
「ごめんなさぁい、でも見てほら」
彼女の声は、全く悪びれる様子もなく弾んでいる。
「犬笛、見付かったのかい?」
「ううん」
彼女の返事とほぼ同時に振り返った俺は、彼女が抱えた見覚えの有る布地を凝視した。
「フウカさん。それ」
「シダの木に引っ掛かってたのよ。リュウさんのナップザック! 銘板が光ってたから気付いたの」
彼女は霞の向こうで光っているのが犬笛だと思って、思わず駆け出してしまったらしい。
「犬笛は無かったけど、これが代わりに見付かったの」
慌ててナップザックの中をあらためてみる。中に入れてあった次元間電話も、ノートPCも、何の問題もなく作動した。