男装人生



天井を見上げ、そっと目を閉じようとすると、隣でクスクスと小さな笑い声が聞こえた。

クルリと恭の方へ向きをかえる。


「なんだよ。」


「怜悧がすごく嬉しそう顔をしていたのでつい。」


怜悧は恭の方を向いたのをすぐに後悔した。


月夜でうすらぼんやりと見える恭は、とてもなまめかしくうつる。

顔にかかるウエーブした艶のある黒髪。
切れ長の瞳を伏せると長いまつ毛の影ができる。

優しく緩んだ口元を長い指先が隠す。



こ、この、色気はなんなんだーーー‼
鼻血が出てないかこっそり、鼻下を拭い確かめる。

ドクドクと全身の血が沸騰(フットウ)する。
男子中学生になった心境(シンキョウ)だ。


元々かっこよくはあったけど、そんな目立つ方じゃなかったのに‼
反則だ‼


何気なく鈴音の方を向こうとする。



「?怒ったんですか?」


ひえーーー

恭がさらに近づく。
そして怜悧の肩をしっかりと掴(ツカ)んだ。



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