男装人生


「ち、ちょっと待って‼」


首をぐっと鈴音の方へ向け恭の力に抗(アラガ)う。

今、この顔を見られてしまったら、勘の鋭い恭の事だ。
全て悟(サト)られてしまう。

恭の色気にやられてるとこなんて、絶対に見られてたまるか‼


だが、怜悧なんかより恭は何十倍も上手だ。

決して強く掴んでいるわけではないのだが、怜悧の身体の軸をうまくずらし、器用に自分の方へ回転させてしまった。


終わった・・・

そう思い、近くにある恭のまくら一点を凝視した。

恭の顔なんて見れないよ。




「・・・へぇ。」


静かな部屋に私の顔を見た恭の一声がなんだか間抜けに響く。

恐る恐る恭の顔を覗き込めば、なぜか恭まで顔を赤らめている。

何に対して赤くなっているのか分からないが珍しい表情。
さらに色っぽく艶めいて見えて、今度こそ鼻血が出そうだ。


「なんて顔してるんですか。」


「ふ、ふふふふつうの顔。」

恭だってなんて顔してんだよって言い返したいのに、言葉が出てこない。


「ありえない・・・」


どもる私に呆れたのだろうか。

はぁと溜息を吐き、布団に突っ伏す。
そして、再び顔を上げた瞬間





「まさか俺を見て興奮するなんて・・・。今夜は心配で眠れそうにありません。」




怜悧に襲われたらどうしましょうと冗談混じり笑っている。


いつもの恭に戻っていた。



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