宿題するから利用して
委員長のノートを写す田上結衣の横には、彼女の親友である小崎里緒菜が居た。
いつもあの子を探す時、先に好きな子の女友達と目が合う為、気まずいばかりだ。
「田上さん、コンコン」
「あ! はーい。ありがと」
少し違和感ある笑い方をして、田上結衣は直ぐに席を立った。
長い髪の毛が背中で踊る。
――行くなと叫べば、どんな顔をする?
そう、近藤洋平は田上結衣の彼氏。
花を咲かせる春の妖精に似た華やかさを発する女の子は、
自分に向けていた笑顔とは別物の甘さを秘めた瞳を彼氏に送る。
一年半前から俺は、もしも自分が近藤洋平ならば――と、考えることが癖になってしまった。
もしも自分が彼ならば、どんなに幸せなのだろうか。