【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
めんどくさそうな李織さんに対し、ほんの少し息を吐き出す暁くん。
「しょうがないな…。俺が弾くけど、寝ないでちゃんと聞いているんだよ?」
「…ん、いい曲だったらね。」
そういいつつ、李織さんは大あくび。
寝る気満々に見える。
そんな李織さんに暁くんも苦笑しつつ、暁くんはホールに置かれた黒いグランドピアノにと足を運ぶ。
しかし。
「…あ、やっぱり止めた。柚、弾いてくれる?」
え…?
あたしが?
聞き間違えかと暁くんを見るが、やっぱりあたしを真っ直ぐ見ていて。
当然のように、楽しげにあたしに紙を差し出す。
「ほら、君があの日に弾いてくれた曲だよ。君に弾いてほしいんだ。今だけでいい。…弾けるね?」
「…止めろよ、暁。わざわざ柚に弾かせることもねぇだろ。」
暁くんの楽譜を持つ腕を掴んで止めたのは、聞いたこともないような低い声で怒る優兄だった。
「どうして?俺は柚に弾いてほしいんだ。お前が決めることじゃないよ。」