有明先生と瑞穂さん
瑞穂を抱え上げた時、野次馬の中の女子達が
「キャァッ」
と黄色い悲鳴を上げた。


細くて運動神経もないあの体からよく瑞穂を抱えてあんなに身軽に動けるものだと布津は後になって思う。
火事場の馬鹿力というヤツか――。



「いつつつつ・・・」


瑞穂を支えた口之津は頭も打ってこちらこそ保健室に行くべきなのだが、誰も心配してくれないので一人頭をさすって立ち上がる。


(・・・・・・! 祥子・・・)


階段の上を見上げると、今にも泣き出しそうな顔をした有馬が見ていた。


「しょう・・・」

「!」


口之津に呼ばれた有馬はハッとしてその場を離れる。


「オイ待て、祥子!」


追いかけようとするが、打った体や頭がズキリと痛い。


「――――ッ!!」


「おい口之津先生大丈夫?!先生も保健室行ったがいいんじゃねえ?!」


「・・・ッ、ああ・・・」


有馬が気になったが、布津に支えられひとまず保健室へ向かう。


はじめは戸惑っていた野次馬達も一人、また一人とその場を離れた。





「・・・・・・・・・・・・」



小浜は有明が走って行った方をじっと見つめて最後まで立ち尽くしていた。





***



「失礼します!」


両手がふさがっている有明は乱暴に足で扉を開け保健室に駆け込むと、驚く保健医に構わずベッドに瑞穂を寝かせた。


「ど、どうしたの?有明先生」

「瑞穂さんが階段から落ちてしまって・・・」


「だ、大丈夫です・・・」



ようやく落ち着いた瑞穂はベッドから起き上がり、両手を振って怪我がないことをアピールした。
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