有明先生と瑞穂さん
***


深江は話を聞いて保健室へ向かう途中、廊下の隅でうずくまる有馬を見つけた。


「有馬さん何やってんの?」

「・・・・・・深江」


少しだけ顔を上げたが返事が暗い。


「話聞いたよ。晴ちゃんのとこ行かないの?」

「合わせる顔ない・・・」

「ヤダ~、有馬さんらしくない」


深江は有馬の隣に腰を下ろした。


「口之津先生が下敷きになってくれたんだって?
よかったじゃん~。
口之津先生もカッコイイとこあるぅ~」

「うん・・・・・・」


有馬は伏せていた顔をまた少しだけ上げた。


「晴子に申し訳ないって気持ちもあるんだけどね・・・それ見てちょっとだけ、口之津のことカッコイイって思っちゃったんだ」

「え、何。ノロケ?!」

「違うっ」


突然の有馬の言動に深江はニヤッと頬を緩ませた。


「ずっと心のどこかで思ってたんだぁー・・・。

晴子って、ウチなんかより――」

「え・・・?」


「・・・・・・・・・いや、なんでもない」


有馬は言いやめるとまた顔を膝にうずめてしまった。


「・・・聞いたよ。有馬さんがキレた理由」

深江はふふっと笑う。


「小浜先生が『有明先生が生徒を恋愛対象に見ることはない』って言ったのが問題らしいじゃない」

「・・・・・・」

「別に小浜先生も喧嘩越しな態度じゃなかったらしいし・・・そんなの、今までも他の人からだって言われてきたことじゃな~い。
どうしてそんなくだらないことで今更怒っちゃったの?」


だんまりを決め込む有馬に、「まあいいけどねー」と深江はため息をつく。


「あんな目に合わせちゃった晴ちゃんに同じこと聞かれても言わないつもり?」


有馬の肩がピクリと動いた。
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