春は来ないと、彼が言った。
…微かに藍くんの、微笑が聞こえた。
そこに悪意は感じられない、純粋な微笑み。
わたしは声を聞いただけなんだけど…。
ふっと肩が軽くなり、机の上にはことんとペットボトルが置かれた。
種類までは言ってないのに、わたしの好きなカルピスだ。
「椛ちゃん、いつも飲むから」
一切の笑みがないまま言われたけど、それは先の通り日常茶飯事。
あ、ありがとう…!
もつれた舌で言うと、藍くんは僅かに口角を上げただけだった。