幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
功山寺に着いた。

もうとっくに寝床についてる三条さんたち公卿を 叩き起こして、高杉さんは、決起の趣旨を簡単に説明してお酒を飲んだ。
眠たそうな公卿さんたちが見守る中、一人で、飲んで、飲んで、飲んで…。
って、何杯飲む気?
あ、立ち上がった。
玄関から出て、馬を付けている境内の方へ戻る。
ここまで、公卿さんたちは見送ってくれてる。
さぁ、馬はお尻が痛くて嫌だけど、高杉さんの後ろに乗せてもらおっと。
ん?
高杉さん?なんで、あたしに向かって嫌そうな顔しながら手で、『しっ、しっ』ってやるのぉ?
しょうがないなぁ。伊藤さんに乗せてもらおっと。

先頭の高杉さんの馬が出発しようとして、前足を高々とあげ、高杉さんは、三条さんたちに顔を向けた。

「今から、長州男子の肝っ玉をお目にかけますっ!」

馬が走ったっ。

…そうかぁ。
これが、やりたかったから、あたしを後ろに乗せなかったわけね。
もぉ、こんな極限の時に、かっこつけちゃって。
やっぱ、高杉さんのやる事って、想像の範囲超えてる…。
でも、だから、ついて行けるのかも。

三条さんたちとお酒を酌み交わした事で、高杉さんがやろうとしていることが、勝手にやった事ではなく、公卿つまり、朝廷の認可を得てやってる事だという後ろ盾を得る為に、高杉さんがわざわざ功山寺に公卿を尋ねて行ったのだと、後で高杉さんの行動の意味がわかった伊藤さんが教えてくれた。
だから、お酒を飲む必要があったんだ。
かっこつける必要は、あったのかなぁ…。
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