僕の愛した生徒
僕は奈菜の背中に近付いて
「奈菜、昼間のことは悪かった」
そう言って奈菜の後ろから、買ってきたミルクティーを奈菜の頬にぴとっと当てる。
振り向いた奈菜は悔しそうに口元を歪め、
「分かっているんじゃない。
意地悪はキライ」
そう言う奈菜の顔は泣きべそをかく子ども。
「ごめん。もう意地悪しないから」
なだめるように僕が奈菜の頭を撫でると、奈菜は僕の胸にそのまま頭を預けた。
「約束だよ」
まるで泣いた後の子どもが微笑むように、奈菜が上目遣いに僕を見ながら言う。
その顔は反則だろ。
僕が言える言葉は一つしかなくなる。
「約束するよ」
僕がそう言うと奈菜は
はにかんで、僕の小指に小指を絡めて指切りをした。
それから、僕たちはいつものように話をしながら、
僕たちだけの時間を過ごし、
そして
僕が車で奈菜を家まで送る。
これが僕たちの日課になっていた。