僕の愛した生徒


「藤岡、どうした?」


僕が奈菜の顔を覗き込むと


「先生は先生だから、私の成績も全部、分かっちゃうんだよね?」


奈菜はそっと呟いた。


「まぁな」



僕がそう言った後に流れる僅かな沈黙。

廊下で待機している女子の楽しそうな声が響いた。



「ねぇ、先生?
先生は私の成績が悪くても私のこと嫌いにならない?」


切り出す奈菜の顔は不安そう。



奈菜はそんな事を気にしていたのか?



僕はフッと笑い、


「心配しなくても、そんな事で嫌いになる訳ないだろ?

それに、奈菜がどんな成績でも、
何かを仕出かしたとしても
僕たちは何も変わらない。

奈菜は奈菜だよ」



そう言うと、奈菜は安堵の笑みを浮かべた。



そして懇談を再開し、一通りお決まりの話をして、最後に意見などを聞く。

奈菜はそれに
“特に何もない"
と言ったが、

席を立つ時、思い出したように僕に尋ねた。



「今、気づいたんだけど
私って先生に隠し事も出来ないの?」


何事かと構えると、何とも気が抜ける奈菜の質問。



それよりも、奈菜は自分が感情を隠せないことに気づいていないのか?

それどころか全部、顔に書いてあるんだけど。



って、気づいていたら奈菜じゃないか…



「成績も生活態度も全部、僕にバレるぞ」


僕が笑うと、


「なんか、それってズルい」


と奈菜も笑った。
< 36 / 207 >

この作品をシェア

pagetop