僕の愛した生徒


放課後になり

僕と奈菜はいつものように合宿所にいた。


僕は鼻歌を歌いながらハンガーを吊していく奈菜の後ろ姿を見ながら缶コーヒーを飲んでいる。


たまに音を外す奈菜の鼻歌。


それに思わず笑ってしまった僕を奈菜は振り返って怪訝な顔をする。



僕が何でもないような顔をしてコーヒーに口をつけると、奈菜は首を傾げ、再び鼻歌を歌いながら手を動かし始めた。


今度は違う歌。

それは僕には懐かしい曲。



玲香とよく聞いていたな…



奈菜の鼻歌に僕の鼻歌を重ねる。


あの頃が蘇る。



「先生もこの曲を知ってるの?」


振り返った奈菜。



もう10年くらい前に流行っていたその曲。


「よく知っているよ」


僕は答えた後、懐かしさからつい饒舌になり、当時の話を奈菜に聞かせた。


教員になりたてだった頃の話や、
エピソードなど。



奈菜も楽しそうに僕の話に相槌を打ちながら耳を傾ける。


「本当に懐かしいよな」


そう漏らす僕に、奈菜は笑顔を絶やすことなく言った。
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