僕の愛した生徒


それから数日後

僕は泊まりがけで出張に出掛ける事になった。

当然、奈菜にも会えない。


それは、たったの5日間。

けれど、僕たちが付き合い始めてから、こんなに顔を合わさない事は無かった。



だからなのか?

何となく違和感を感じる。




出張先からホテルに戻って掛ける奈菜への電話。

「お疲れ様」と電話越しに聞こえる奈菜の声が、僕の疲れた体を癒やしてくれる。


奈菜は学校での出来事を楽しそうに話し、僕はそれに返事する。


声や口調で伝わってくる奈菜の感情。

僕は話している奈菜の表情を想像して、ひとりで微笑んだ。




そして、出張が終わる前日。

僕はいつものようにホテルへ戻って奈菜に電話をし、
一時間近く話した後で奈菜に尋ねた。


「お土産は何がいい?」


奈菜は少し間を空けて答える。


『何もいらないよ。
先生が無事に帰って来てくれたらそれだけでいい』


笑うように話した奈菜。


こんな時、玲香は欲しいものを言っていたよな。

時には、出掛ける前にお土産を頼まれていた。



「遠慮しなくてもいいぞ?」


『うん』


返事をする奈菜の声はどこか寂しそうで、


「どうした?」


僕は尋ねた。



『何でもない。

ただ…早く先生に会いたい』



絞り出すような声で言った奈菜。




何故だろう?


それが僕の中でやけに響く。



そして

僕の鼓動を大きく打ち付けた。
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