僕の愛した生徒
それから
奈菜は僕の事を“秀?”と意味なく何度も呼んで、その度に僕が返事をすると、奈菜は一人で照れて頬をほんのりピンクに染めた。
「秀、このソフトクリーム美味しいね」
僕を見ながら屈託なく話す奈菜の頬は、やっぱりピンクに染まる。
僕は不意に奈菜を抱き締めたい衝動に駆られる。
が、ここは我慢……
「奈菜、デジカメ見せてよ。
沢山、撮っていただろ?」
僕が澄まして言うと、
奈菜は“いいよ”と鞄からそれを取り出し、僕の手に乗せた。
僕がそれを一つ一つ見ていくと、僕が思っていたよりも沢山の画像があった。
でも、そこに人物が写っているものは一つもなく、被写体になるものは動物や看板や風景ばかり。
「奈菜、写真に写るのは嫌い?」
「そんなことないよ」
「じゃあ、次に写真を写す時には僕が撮ってあげるよ。そうすれば奈菜も入れるだろ?」
僕がそう言うと奈菜は
“自分で撮るからいいの”
と柔らかい笑顔を僕に見せた。
「でも、それじゃあ動物とかしか撮れないだろ?
せっかく来たんだからさ、記念に奈菜も一緒に入ればいいのに」
「そうだね。ありがとう。
でもね、私は秀と一緒に見たものを残せたらそれでいいの」
微笑むように話す奈菜の横顔が
どこか寂しそうに見えた。
「何で?自分が入っていた方が
何の写真かも一目でわかるぞ?」
「でもね、私が入っているとね、
“誰と来たの?”って聞かれるかもしれないじゃない?
そしたら、誰と来たのかなんて答えられないんだもん。
だから、この写真のことは私だけが分かれば、それでいいの」
微笑みながら答える奈菜は
ソフトクリームを美味しそうに舐めながら足をブラブラさせていた。
ずっと嬉しそうにカメラを構えていた奈菜。
僕はシャッターを押している奈菜をただ子どもみたいだと思っていた。
でも……
奈菜はレンズ越しに
本当は何を見ていたのだろうか?