ありのまま、愛すること。
もしも連れていかれても、すぐに「お母さ~ん」と、家に帰ろうとしていたんでしょう。

あるいは、駄々をこねて先生を困らせたりとか。

それでも、母ならば心を鬼にして、幼稚園に置いてくるのが教育のひとつでもあるのでしょうが、それを母はできなかった。

自分のなかで心に決めていたんでしょうね。

「この1年だけ、もう1年だけ美樹さんといっしょにずっと過ごしたい」

と。

私の年中時から、母は徐々に仕事に復帰し、私が幼稚園に行くことで、いっしょの時間は少なくなりました。一緒にいることを母子ともに諦めたようですが、それでも二人はすぐにでも、お互いの日課がすめば会いたがった。

幼稚園が終わると、私は友だちの家で夕方まで遊んでいました。

仕事を終えて夕刻に母が迎えに来るまで、友だちと遊ぶことで気を紛らしていたんです。

でも、母が迎えに来れば、やはり一目散にその家を後にしていました。

まあ、外で母に甘える姿は、たとえ4歳でも見せませんでしたから、平静を装って、「バイバイ」をしていましたが、母と二人だけになった瞬間から、思いっきり甘えるひとときが始まるんです。
< 21 / 215 >

この作品をシェア

pagetop