黒き藥師と久遠の花【完】
 本来ならばおぞましい話だが、あくまで演技。キリは良い役者だ。
 見張りはこちらを疑う素振りすら見せず、「ほら、入れよ」と部屋へ通してくれた。

 日頃から使われていないのか、何とも殺風景な部屋だった。
 家具やガラクタすら見当たらない部屋の隅で、クリスタが小さくうずくまっている。

 青ざめた顔を上げてこちらを見ると、クリスタはハッと息を呑んだ。

「みなも、さん……」

 驚きと恐怖で丸くなった目が、みなもを真っ直ぐに捕らえる。
 次第に大きな瞳が潤み出し、唇を噛み締めて涙を懸命に堪えていた。

 キリはコツ、コツと足音を立てて近づくと、クリスタの目の前へみなもを横倒しにした。

「今からお前たちを躾ける道具を取ってくる。クリスタ、それまでコイツを看病してやれ」


「今からお前たちを躾ける道具を取ってくる。クリスタ、それまでコイツを看病してやれ」

 弾かれたようにクリスタが顔を上げて、キリを睨みつける。
 が、キリはそんな無言の批難に背を向け、部屋を出て行った。

 扉が閉まった後、向こう側からキリと見張りが会話する声が聞こえてくる。
 そしておもむろに二つの足音が遠ざかり、消えていった。

 ジッと扉を凝視していたクリスタだったが、我に返り、心配そうにみなもの顔を覗き込んだ。
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