黒き藥師と久遠の花【完】
 そんなある日、バルディグとの戦争が始まった。

 当初、自分たちは城の守りを固める要員として招集され、戦地に飛ばされはしなかった。
 だが、いつ戦いの最前線へ行くことになるか分からない。

 しかもバルディグの毒は解毒できず、次々と仲間は倒れていった。
 共に暮らしていた身内も、戦場で命を落とした。

 このままバルディグに城まで攻め入られ、すべて奪われるかもしれない。
 犠牲者が増えるにつれ、街の人間から笑顔が消えていった。
 それはクリスタも例外ではなかった。

 先の見えないこれからに怯えるような、どんよりと曇った顔。
 今までこんなに弱々しい彼女を見たことはなかった。
 
 少しでもクリスタを安心させたい、そう思っていたのだろう。
 ボリスは少しでも時間が取れれば、クリスタと顔を合わせて励ましていた。
 会いに行く時は、いつも彼女の好きな花を手土産にしていた。

 家へ戻って来る度に、ボリスは「僕よりもレオニードが顔見せたほうが、クリスタも喜ぶよ」と言ってきた。
 そう急かされても、自分から積極的には会いに行かなかった。

 ボリスの態度を見れば、クリスタに惚れているのはよく分かったから。

(恐らくその時にクリスタと約束したんだろう。ボリスらしいというか……)

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