黒き藥師と久遠の花【完】
 大切な相手が危機に晒されている、という不安と焦りは、嫌というほど分かる。
 今もそうだが――二ヶ月ほど前に味わい続けた焦燥感に、どれだけ胸を握り潰されたことか。

 まさかあの時の焦燥感を、再び抱え込むことになるとは思いもしなかった。

(必ず助けてみせる。みなもも、クリスタも)

 レオニードは前に意識を戻し、一刻でも早く先へ進むことに専念する。

 しばらく二人は、無言で込み入った小路を走り続けた。
 疎らに響く足音と、互いの息を切らす音。そしてさらに早まっていく己の鼓動の音が、耳に集まってくる。

 奥へ進むにつれて、人気は完全になくなり、空気は湿り気を帯びて重たくなっていく。
 夕日に照らされて色濃くなった建物の影は、路上へと重なり合い、黒い絨毯を敷き始めていた。

 間もなくゴルバフ商会へ到着という時に、目前の角地から人影が現れた。
 影で相手の顔はよく分からないが、中背のがっしりした体躯は男性のものだった。

 おもむろにレオニードとボリスは左に寄り、ぶつからないよう注意を払う。
 が、男はフラフラと二人に吸い寄せられるよう、近づいてきた。
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