黒き藥師と久遠の花【完】
「これは――」

 ボリスの目が丸くなり、食い入るように紙を凝視する。
 レオニードも一緒になり、書かれた文字を何度も読み返す。

『ゴルバフ商会の裏で待て、そこからクリスタを逃がす』
 紙には走り書きでそう書かれていた。

「まさかみなもさんが……?」

 首を傾げながらボリスが呟く。
 軽く唸ってから、レオニードは小さく首を横に振った。

「分からない。……ただ、これはみなもの字じゃない。誰かに協力者がいるのなら良いが、罠だとも考えられる。それに――」

 レオニードは言葉を止めて考え込む。

 なぜぶつかってきた男は、自分たちがクリスタを探していることが分かったのだろうか?
 そもそも、顔見知りの店主が思いつきで教えてくれた噂をたよりに、ここへ来たのだ。あくまで偶然の範囲だ。

 しかしさっきの男は、確信を持って手紙を渡してきた。
 まるで自分たちがここへ来るまでのことを、ずっと見ていたかのように。

「――あまりにも不自然だ。誰かの作為を感じる」

「僕もそう思う。でも、一体何が狙いなんだろう?」

 ボリスは腕を組み、彼には珍しく眉間に深い皺を刻んだ。
 それにつられ、レオニードも奥歯を噛み締めて考え込む。
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