黒き藥師と久遠の花【完】
 怒りと殺気が堪え切れず、全身から漏れ続けている。
 ここまで怒りを顕にしたボリスを見たのは、これが初めてだ。

 その表情に一瞬息を呑んだが、レオニードは目を鋭くさせ、通りの奥を睨みつける。
 自分もボリスと同じ気持ちだった。

 手紙を折り畳むと、二人は石畳を力一杯に蹴って先を急いだ。



 大きめの十字路を左に曲がると、間もなくゴルバフ商会の建物が見えてくる。
 一見すれば廃屋のようだが、中に娼婦を囲っており、非合法の賭け事も行われているという噂も耳にしている。

 建物に近づくにつれ、中から時折、ドンッ、バタンッという派手な音が聞こえてきた。
 どんな状況なのかは分からないが、騒々しく殺気立った気配が漂ってくる。

「明らかに取り込み中だね。何が起きているんだろう……?」

 ボリスの困惑した声を聞きながら、レオニードは顔をしかめる。

 みなもがあの中にいるとしたら、今まさに戦っている最中なのだろう。
 毒を持っているとはいえ、多勢に無勢。安心できない状況だ。

 早くみなもの元へ行かなければ。
 また傷ついた彼女の姿を見るのはご免だった。
< 350 / 380 >

この作品をシェア

pagetop