黒き藥師と久遠の花【完】
 ゴルバフ商会の裏へ回るため、二人は建物同士を仕切る小路に入っていく。
 
 すると建物の裏口から、小柄な女性が飛び出してきた。
 少し遅れて男が飛び出し、彼女を捕まえようと手を伸ばす。

 レオニードよりも先に、ボリスが彼女の名前を叫んでいた。

「クリスタ!」

 名を呼ばれてクリスタがこちらへ走り出す。
 男も「待ちやがれ!」と怒声を上げながら、彼女の後を追ってくる。

 ほぼ同時にレオニードとボリスは剣を抜き、より速く馳せる。
 一気にクリスタたちとの距離が縮まった。

 僅かにボリスよりも前に出たレオニードは、腕を伸ばし、クリスタの手を取った。

 グイッと彼女をこちらへ引き寄せると、即座に後ろへ下がる。
 入れ替わるようにボリスが前に出て、剣を振り上げた。

 男が一瞬身を強張らせ、慌てて剣を構えようとする。しかし――。

 ――ギィン! 男の手から剣を弾き飛ばし、ボリスは間髪入れずに斬りつける。
 胸に横一線を刻まれ、男はガクリと膝を折り、その場に倒れてうずくまった。

 ボリスは剣の持ち手を変えると、男に向けて勢いよく突き立てた。
 かろうじて刃は男の頬をかするだけで、切っ先は地面をえぐっていた。
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