黒き藥師と久遠の花【完】
「動くな。そのまま寝ていろ……もし少しでも動けば、今度はその胸を貫く」
ボリスの凄みのある声に、男が「ヒィッ」と小さな悲鳴を漏らす。そして小刻みに何度も頷いた。
用心して三人が男から距離を取った後、レオニードは改めてクリスタを見た。
髪は乱れ、青ざめた顔をしていたが、特に目立った外傷は見当たらない。
ボリスも彼女の姿を確かめると、かすかに安堵の息をついた。
「良かった、生きていてくれて……ケガはない?」
唇をわななかせながら、クリスタはゆっくりと頷く。
見る見る内に大きな目には涙がたまり、小さな嗚咽が溢れた。
チラリと建物を見やってから、急にクリスタがレオニードの胸にしがみついてきた。
「早く……早くみなもさんを助けに行って! 私を逃がすために毒まで飲んで弱っているのに、まだあそこに残って戦っているの」
一瞬、レオニードの思考が止まる。
どんな経緯で、みなもが毒を飲む羽目になったんだ?
生まれ持った血のおかげで、人並外れて毒の耐性は強い。
だが、完全に効かない訳ではない。猛毒ならば、いくら彼女でも無事では済まない。
レオニードは我に返り、クリスタの両肩に手を置いた。