黒き藥師と久遠の花【完】
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「どこに行きやがった、あの野郎!」

 キリから教えてもらった一階の物置き部屋の片隅。
 みなもは壁に背をつけ、乱れた呼吸を整えていた。

 耳を澄まし、男たちの怒声や駆けずり回る音を聞く。
 まだ部屋の前まで来ていないが、確実にこちらへ近づいていた。

(そろそろクリスタさんが裏口から逃げている頃だ――)

 懐を探って黒い丸薬をつまみ出し、口の中へ放り込む。
 奥歯でガリッと噛み砕くと同時に、苦味が全身へ広がった。

(――やっと攻めに出られるよ)

 体から、かすかに摘みたての草のような香りが漂い始める。

 昔から『守り葉』にのみ伝えられてきた毒。
 ただそこに立っているだけで、毒が放散されていく体質に変わるのだ。
 しばらくこの部屋にいれば毒が充満し、連中がここへ入ってきた直後に体を痺れさせる事ができる。

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