黒き藥師と久遠の花【完】
 ここに潜んでいれば、まず自分の身の安全は確保できる。
 しかし、ずっと助けが来るまで待つ気はなかった。

(連中が身動き取れなくなるように、毒を振りまかないとね。……絶対に逃さないからな)

 頭は冷静だが、腹立たしさで目が据わってくる。
 鋭くなっていく視線を、そのまま扉へ向けた。

 壁の向こうから、ドンッと激しく扉を開く音がする。もう彼ら隣の部屋まで来ているようだった。
 みなもは息を殺し、彼らの訪れを静かに待つ。

 バァンッ!
 響き渡る音とともに、男たちが部屋へなだれ込む。

 どうやら追って来た連中が全員、一気にこの部屋へ入ったようだった。

(あーあ、無用心だな。そんな事すれば……)

 みなもが小さく肩をすくめた刹那。
 派手に中の物を倒しながら、次々と男たちは倒れていく。

 苦しげにうめき声を出していたが、次第にか細くなっていく。
 体に力が入らず、声を出す事すらままならなくなっていた。

 起き上がる気配がない事を確かめてから、みなもは男たちを踏まないよう、足元に気をつけながら扉まで近づく。

 首を伸ばし、左右の廊下を見回す。上の階まで響き渡るような音がしたのに、新たな追手が来る気配はなかった。

 助かったと思う反面、強い違和感を覚えて目を細める。

(国宝を盗むなんて大仕事の最中なのに、さっきの音に反応しないなんて……ありえない)

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