黒き藥師と久遠の花【完】
スッと隣に並んだ従者の少年が、膝をつき、空の両手を差し出す。
みなもは少年に杖を渡してから、マクシムに体を向け、ドレスの裾を摘み上げて一礼する。
そしてレオニードに近づき、そっと彼の手を取った。
顔を上げると、こちらを見下ろしていたレオニードと目が合う。
彼はどこか眩しそうに目を細めながら、口元に柔らかな微笑みを浮かべていた。
『よく似合っている。……想像していたよりも綺麗で驚いた』
さらりとお世辞を言えるような人ではない。
それが分かっているからこそ、彼の言葉を素直に受け入れることができる。
ただ、妙に気恥ずかしくて、「ありがとう」と受け入れる言葉が出せなかった。
と、レオニードは少し屈んで、みなもの耳元へ顔を近づけて囁いた。
『みなも、俺の首に腕を回してくれ』
言われるままに、みなもはレオニードへ抱きつく形を取る。
次の瞬間、体がフワリと浮かび、一気に視界が高くなった。
ちょっと顎を動かせば口付けられるほど、二人の顔が近くなる。
さすがに公衆の面前でやる勇気はなかった。けれど――。
みなもはレオニードの肩首に顔を埋めると、ギュッと腕に力を込めた。
『レオニードもその格好、すごく似合ってるよ。まさか貴方が相手だと思わなくかったけれど……一緒にこの場に立てて嬉しいよ』
こちらの言葉が、人々の大きな歓声にかき消されそうになる。
しかしレオニードの耳にはしっかり届いたらしく、頷く気配があった。
大きく揺れないよう、レオニードがゆっくりとした歩みで馬へと戻っていく。
一歩進むたびに、新たに周囲の歓声――特に女性たちの甲高い声――が飛び交い、二人を包み込んでいった。
パレードを終えても熱気冷め止まぬ街を、フードを被った男が歩いていく。
祭りに不似合いな身なりだったが、気配を消しているせいか、周りは男に目もくれない。
黙々と歩いていた男だったが、ふと立ち止まり、ちらりと後ろを見る。
――跡をつけられている。
一瞬、男の背中に緊張が走る。
しかし一笑して力を抜くと、男は再び歩き出した。
辺りを見渡しながら進んでいくと、左に細い路地が見えてくる。
すかさずその路地を曲がると、男は足を止め、背後からの音や気配に神経を集中させた。
足音はまったく聞こえなかった。
だが唐突に、重みのある気配が背後に現れた。
みなもは少年に杖を渡してから、マクシムに体を向け、ドレスの裾を摘み上げて一礼する。
そしてレオニードに近づき、そっと彼の手を取った。
顔を上げると、こちらを見下ろしていたレオニードと目が合う。
彼はどこか眩しそうに目を細めながら、口元に柔らかな微笑みを浮かべていた。
『よく似合っている。……想像していたよりも綺麗で驚いた』
さらりとお世辞を言えるような人ではない。
それが分かっているからこそ、彼の言葉を素直に受け入れることができる。
ただ、妙に気恥ずかしくて、「ありがとう」と受け入れる言葉が出せなかった。
と、レオニードは少し屈んで、みなもの耳元へ顔を近づけて囁いた。
『みなも、俺の首に腕を回してくれ』
言われるままに、みなもはレオニードへ抱きつく形を取る。
次の瞬間、体がフワリと浮かび、一気に視界が高くなった。
ちょっと顎を動かせば口付けられるほど、二人の顔が近くなる。
さすがに公衆の面前でやる勇気はなかった。けれど――。
みなもはレオニードの肩首に顔を埋めると、ギュッと腕に力を込めた。
『レオニードもその格好、すごく似合ってるよ。まさか貴方が相手だと思わなくかったけれど……一緒にこの場に立てて嬉しいよ』
こちらの言葉が、人々の大きな歓声にかき消されそうになる。
しかしレオニードの耳にはしっかり届いたらしく、頷く気配があった。
大きく揺れないよう、レオニードがゆっくりとした歩みで馬へと戻っていく。
一歩進むたびに、新たに周囲の歓声――特に女性たちの甲高い声――が飛び交い、二人を包み込んでいった。
パレードを終えても熱気冷め止まぬ街を、フードを被った男が歩いていく。
祭りに不似合いな身なりだったが、気配を消しているせいか、周りは男に目もくれない。
黙々と歩いていた男だったが、ふと立ち止まり、ちらりと後ろを見る。
――跡をつけられている。
一瞬、男の背中に緊張が走る。
しかし一笑して力を抜くと、男は再び歩き出した。
辺りを見渡しながら進んでいくと、左に細い路地が見えてくる。
すかさずその路地を曲がると、男は足を止め、背後からの音や気配に神経を集中させた。
足音はまったく聞こえなかった。
だが唐突に、重みのある気配が背後に現れた。